定温輸送ボックスに使われる保冷材の主成分は、“水”です。その水は、他の液体とは異なる不思議な特性があります。そのことが、保冷材を扱う上での注意点になります。2回シリーズで、水の不思議な特性を紹介します。

①氷は水に浮く

夏の暑い日に飲み物に氷を入れると、氷は上の方に浮きます。なぜ浮くのか、考えたことはありますか?理由は、簡単。氷の方が軽いからです。水は液体状態より、固体になった氷の方が軽くなるのです。(水の比重は1に対して氷の比重は0.92)

氷が水に浮くなんて日常の風景すぎて当たり前に思ってしまいますが、実は不思議なことなんです。というのも、固体よりも液体の方が重い物質は、地球上の中で水だけです。

普通の物質は下右絵の通り、固体になると分子の隙間が小さくなるので、体積が小さくなり、比重は重たくなります。しかし、水は、下左絵の通り、固体になった氷の方が隙間が大きくなり、軽くなるのです。これは、氷が水素結合によって隙間を空けて結晶化するからです。

 

②保冷材として扱う上での注意点

【注意点①:隙間を十分に取って凍結させる】

保冷材を凍結させる時の注意点は、凍結膨張を起こすということです。保冷材の主成分は水なので、凍結させると体積が大きくなります。(軽くなるということは、同じ重量であれば大きくなるということ)

ハードケースでは、あらかじめ保冷材の原液を少なめに充填しているので、凍結させてもあまり外寸サイズに変化は見られませんが、ソフトケースでは明らかに大きく、厚くなります。保冷材を凍結させる時には、十分な隙間を確保するようにしてください。後で保冷剤を取出せなくなってしまいます。

【注意点②:保冷材の下に冷気を回す】

冷えて凍っていくにつれて比重が軽くなるので、保冷材は上から凍ります。厳冬の湖の表面に氷が張っても、氷の下は水のままですよね。あのイメージです。(だから、魚は生きていけます。)凍結庫で保冷材を凍らせる場合、保冷材の下にしっかりと冷気が回るようにしてあげると早く凍結させることができます。

【注意点③:蓄熱材は逆になります】

一方で保温時に使われる蓄熱材は、主成分がパラフィンなので、凍結時に膨らむ心配はありません。(むしろ収縮します)また、蓄熱材を凍らせる場合は、下から凍り出すので、冷気は蓄熱材の上に回るようにしてください。

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コラム「水の不思議②へ続く」