6月18日に掲載しました水の不思議①では、凍結膨張の話をしました。今回のコラムでは、水の2つ目の不思議な特性“過冷却現象”について説明します。水を主成分とする保冷材の注意点に繋がります。

①水は凝固点で凍らない

すこし前、「フタを開けた瞬間に凍るコーラ」が売られていたのをご存知でしょうか?-4℃で保管したコーラは固体の氷にならず、液体のままです。その状態で衝撃を与えると、瞬間的に凍り出します。これは、水の不思議な特性“過冷却現象”によるものです。

過冷却現象とは、凝固点で固体にならず、凝固点以下でも液体のままになっている現象のことです。そんな特性がある液体は、地球上で“水”だけです。

水は分子がエネルギーを持って運動している状態です。それが氷になると、分子が運動を止め、安定した結晶構造になります。結晶構造になるためには、まず氷の種になるようなごく小さな氷の粒(核)が必要で、この粒(核)が起点になって連鎖的に回りの水を結晶化していきます。この時、粒(核)ができないと、周辺温度がたとえ凝固点以下になっていても、結晶化の連鎖が起きず、液体のままになります。つまり、零下の水ができます。その状態で衝撃を与えると、瞬間的に粒(核)が形成され、一気に固体になります。それが、前述の「フタを開けた瞬間に凍るコーラ」の原理です。

粒(核)ができるためには、ある程度のエネルギーが必要です。ゆっくりと凝固点付近の温度で冷やしていても粒(核)ができません。粒(核)を作るためには、凝固点よりも十分に低い温度にする必要があります。なお、一たび、粒(核)ができると、その水は本来の凝固点に戻って、周りへの結晶化の連鎖を始めます。(下のグラフ参照)

②保冷材を扱う上での注意点

保冷材には、凝固点温度が表記されています。しかし、その凝固点温度付近に保冷材を置いても、前述の過冷却現象により保冷材は凍ってくれません。最初の粒(核)を作るために、表示の凝固点温度マイナス10℃の環境下に保冷剤を置く必要があります。

例:0℃の保冷材・・・0℃で凍結しません。(小さい粒ができない)→マイナス10℃以下で凍結させる
例:-25℃の保冷材・・・-25で凍結しません。→マイナス35℃以下で凍結させる

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