今回は、医薬品の品質管理に関わるワードとしてよく使用されている「GDP」について、簡単にポイントを抑えながらご説明していきます。

GDPとは

GDP(Good Distribution Practices)とは、医薬品が製造場所から出荷され、患者のもとへ届けられるまでの流通過程における品質管理を目的とした基準のことです。

GDPが定められるまでは、医薬品の品質管理にはGMP(Good Manufacturing Practices)という基準が採用されていました。しかし、GMPは医薬品の製造過程における品質を管理するもので、製造後の出荷から納品までの品質を確認する規定はありませんでした。

医薬品は、作られてから患者のもとに届くまで多くの業者が関わり、様々な場所へ輸送・保管されます。その期間で、正しい取り扱いが行われていなければ、安全に患者に提供することはできません。よって、GMPだけでは品質管理が不十分であることから、これを補完する目的としてGDPが生まれ、管理の範囲が輸送・保管まで拡大されるようになりました。

GDPのポイント

GDPについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

医薬品が工場から出荷されて実際に使用されるまでの間、どのような点を注意しながら品質管理していく必要があるでしょうか。GDPでは、以下の3つのポイントが重要になってきます。

①温度管理

医薬品の品質を保持するためには、徹底した温度管理が必要不可欠です。種類によって、キープする温度は違ってきますが、急激な温度変動などは医薬品を変質させる可能性があり、そうなると使用不可になる場合も出てきます。

冷蔵・冷凍保管はもちろんのこと、室温保管であっても、指定された温度範囲を逸脱しないように、厳格な温度管理をする必要があるのです。

もし、保管・輸送中に温度逸脱が発生した場合は、品質保証の責任者に直ちに連絡され、規程の管理温度からの乖離幅・時間・回数等、その温度逸脱の状況から、医薬品の安定性データに基づき、その医薬品の取り扱いを決定されなければなりません。

②流通過程の管理

流通過程では、多くの業務が行われ、そこに様々な人が関与します。特に近年では、企業戦略の一つとして物流業務を専門の業者へ委託する3PL(Third-Party Logistics)が一般的になってきているため、品質管理の範囲は自社だけでなく、委託先(またその先の委託先がある場合も)にまで広がります。GDPはこうした3PL全体に対して品質面での共通認識をもたらす基準としての役割も担っています。

また、GDPではこうした過程の中でのセキュリティ管理も重要になります。海外では、輸送中にトラックごと盗まれた医薬品がそのまま横流しされるといったケースも少なくありません。

③偽造医薬品の対策

世界的に問題となっている偽装医薬品の存在。日本では、大きな問題にはなっていないまでも、個人輸入による流入と健康被害が複数確認されています。

このような事態を未然に防ぐためには、GDPの基準に沿って流通過程に関わる全ての企業が、ナンバリングした医薬品をデータで管理するなどのセキュリティ対策に講じていかなければならないでしょう。

最後に

私たちの健康を守る医薬品は、体内に直接取り込むものであるからこそ、確実に安全な状態で届けられなければなりません。

日本では、2018年12月にGDPのガイドラインが発出されましたが、その普及率はそう高くはないようです。日本の医療がこれからも安全に提供されるには、少しでも早くGDPに沿った運用がスタンダードになる必要がありますね。