今回は、保冷・保温製品の構造について、魔法瓶を例に簡単にご説明していきます。

魔法瓶はなぜ、熱を通さないのか?

真夏の炎天下に、冷たいスポーツドリンクを入れた魔法瓶を放置したとしても、すぐにはぬるくなりません。それと同様に、真冬であっても、魔法瓶に入れた熱々のお茶は、長時間一定の温度を保つことが出来ます。

このように保冷・保温に優れた魔法瓶は、なぜこれほどの温度キープが可能なのでしょうか。実はそこには、熱の伝わり方が深く関わっています。

熱の伝わり方

魔法瓶の保冷・保温の仕組みを理解するためには、熱の伝わり方の種類を知る必要があります。熱の伝わり方には、伝導・対流・輻射の3つがあります。それぞれ簡単に説明していきましょう。

①伝導

熱が物質を通して運ばれる現象のことです。私たちが感じている「熱」の正体は、物質を構成している原子や分子の振動です。高温になればなるほど、分子の動きは活発になります。ある物質の分子振動が、他の物質にも伝わることで、熱は運ばれていきます。例えば、熱したフライパンに金属のスプーンを置いておくとスプーンが非常に熱くなっていることがあります。これは、フライパンを構成している分子の振動がスプーンの分子にも伝わったために起きていることなのです。

②対流

熱が流体(液体や気体)によって伝わる現象のことです。液体や気体は、高温になるにつれて膨張し、密度が小さくなり軽くなることで上昇していきます。そこに、低温の密度が大きく重い流体が流れることによって、その空間の中で循環が起こり、熱が伝わっていく仕組みになっています。エアコンは、その対流の仕組みを利用して、温かいまたは冷たい空気を室内に送り込み、強制的に対流を起こしているのです。

③輻射

物体の発する熱が電磁波となってほかの物体に伝わる現象のことです。わかりやすい例としては太陽ストーブが挙げられます。これらの熱源から発生する熱が放射線によって私たちの体に伝わることで、温かいと感じることが出来ます。

 

私たちが普段何気なく感じている熱は、物体から他の物体へまたは流体を通して、私たちのもとへと運ばれているのですね。

では、これらの熱の伝わり方が魔法瓶の構造と一体どのように関係しているのか、解説していきたいと思います。

魔法瓶の構造

魔法瓶は、瓶の内外部で起こる3つの熱移動を最小に抑えることができる構造になっています。今回は、魔法瓶に冷水を入れて直射日光の当たる場所に置いた場合を想定して考えてみましょう。

①伝導を抑える

魔法瓶は、二層構造で内瓶と外瓶の間が真空状態になっています。魔法瓶をアスファルトの上に置いておくと、アスファルトは太陽の熱で高温になり分子の動きが活発になっているため、魔法瓶へとその振動を伝えようとします。しかし、空気のない真空空間では、分子の数がわずかしかないため、アスファルトからの分子振動も伝わりにくく、熱の移動を抑えることが出来ます。

②対流を抑える

気体が存在していない真空状態では、そもそも対流は起こりません。

③輻射を抑える

直射日光の当たる場所に魔法瓶を置いておくと、当然太陽からの輻射熱を浴びることになります。太陽からの熱が地球に届いていることからも分かるように、輻射熱は真空状態にするだけでは防ぐことができません。しかし、魔法瓶の内瓶と外瓶の間には銅箔が入っており、それが鏡としての機能を果たしてくれることで、太陽からの放射線を反射させることが出来ます。

 

魔法瓶の優れた保冷・保温性能は、このように3つの熱の伝わり方を考えた構造だからこそ実現しているのです。

最後に

今回は、保冷・保温製品の一例として、身近な魔法瓶を取り上げましたが、弊社で取り扱っている保冷箱も同じように、これらの熱の伝わり方を考慮した設計を行っています。魔法瓶のように、熱の影響を受けにくい高性能の保冷箱をお探しの際には、是非ともご相談ください!!