今回は、段ボールなどのワンウェイ用の箱から繰り返し使用できる「通い箱」に切り替える際の判断基準について詳しくご紹介します。

通い箱に切り替える

何回も同じところに、同じ商品を運ぶのであれば、一回ごとの使い切りの“ワンウェイ箱”ではなく、何回も使える“通い箱”に切り替えたいところです。

きっとその方が、地球に優しく、お財布にも優しくなるはずです。

しかし、“通い箱”に切り替えるためには、いくつか押さえておかなければいけないポイントがあります。それを間違えると、せっかく、“通い箱”に切り替えてもコストアップになったり、製品を出荷できなくなるかもしれません。今回は、“通い箱”に切り替えるポイントについて説明致します。

通い箱?or ワンウェイ箱?

ワンウェイ用途には、主に段ボール箱が使われています。段ボール箱は、低コストで購入できるだけではなく、処分が比較的に容易なので、送り先も受け取りやすいという利点があるからです。

一方で、通い箱としては、プラスチック素材の箱や金属製の箱が使われています。繰り返し使うことになるので、耐久性が求められるからです。そのため、通い箱は割高なものになります。

見極めポイント

ワンウェイ箱を通い箱に切り替えるべきかどうか、その答えは以下の計算式が成り立つかどうかで決まります。それぞれの項目について見て行きましょう。

通い箱の投資コスト

通い箱の投資コストは、通い箱の単価x購入必要数量で決まりますが、ここで問題になるのが、購入必要数量です。購入必要数量を単純に1回の使用予定数量の〇倍と見做す場合がありますが、結果的に数量に過不足が出てしまうことも少なくありません。数量過剰の場合は、投資がムダになるだけではなく、日々に余分な在庫スペースが必要になります。逆に数量不足が生じた場合には、予定通りに製品出荷ができなくなったり、箱の追加購入が発生し、コストが膨らんでしまうことになります。

そうならないために、きちんと通い箱の輸送サイクルタイムを把握することが大切です。求め方は以下の通りです。

仮に輸送サイクルタイムが43日であれば、43日間で使用する予定の箱の数量が、最低限に用意しなければいけない数になります。(一般的にはプラスアルファします)

使用予想回数

使用予想回数は、通い箱の耐久性で決まります。耐久性が長ければ長いほど、使用予想回数を多く設定することができるので、通い箱の投資コスト÷使用予想回数は小さくなります。

仮に耐久年数を4年間(1460日間)で設定した場合、サイクルタイムが43日であれば、34回が使用予想回数になります。

梱包作業費

通い箱を検討するにあたり、是非に抑えたいポイントが梱包作業費です。ワンウェイ箱の場合、コストを優先させるあまり、梱包作業に関わる時間を二の次にしてしまうことも少なくありません。

しかし、通い箱の場合、コストは使用回数で割り算できるので、多少コストが高くなっても毎回に掛かる梱包作業時間をミニマイズさせた方が結果的にコストダウンになります。また、作業者の負担も軽減されるので、現場の人手不足解消に繋がります。

通い箱を検討するなら、是非、梱包作業費を抑える設計を目指してください。

返却輸送コスト

この費用は見落としがちですが、ワンウェイでは発生しなかった費用です。もし、自社便で配達しているのであれば、納品した帰り便で前回の空箱を引き上げてくるだけなので、コストは発生しませんが、そうでなければ、空箱の返却輸送コストが必要になります。その場合、少しでも返却輸送コストを下げるために、折りたたみ容器にしておくことが大切です。

具体的な事例

ある案件での事例をご紹介します。

  • ワンウェイ箱・・・段ボール箱を使用 145円/箱+梱包作業時間5分(150円相当)
  • 通い箱・・・プラスチック段ボール箱を検討 2,300円/箱+梱包作業時間3.5分(100円相当)
  • 輸送サイクルタイム・・・43日間
  • 輸送サイクルタイムあたりの使用予想個数・・・240箱(1回あたり10箱平均)
  • 通い箱の耐用年数・・・4年間(1460日間)⇒30回使用可能と判断
  • 通い箱の返却輸送費・・・帰り便があるので、0円と見做す

最後に

以上の視点は、送り元のコストから見た視点ですが、実際に通い箱に切り替わることで、送り先様での開梱作業が容易になったり、箱の処分工数とコストが不要になるので、とても喜ばれます。

また、送り元としても入り数管理がきちんとできるようになったり、輸送品質改善になることで、目に見えるコスト以上のメリットも出てきます。

今まで当たり前に使っていたワンウェイ箱を、この機会に見直してみるのも良いかもしれません。