今回は、冷蔵・冷凍品の輸送に欠かせないツールの一つである「業務用保冷箱」について、その種類と導入プロセスをまとめてご紹介していきます。

業務上で保冷箱を運用する前に

保冷箱といえば、身近な例では、弁当箱を入れるミニバッグやキャンプでよく使われるクーラーボックスなどが思い浮かぶのではないでしょうか。しかし、これらの保冷箱はあくまで家庭用として作られているので、業務上必要な性能(保冷性能・耐久性・積載性等)が考慮されていません。

業務上で保冷箱を運用するときは、①「自分たちの用途に合っているか」、②「十分な保冷性能を発揮できるか(保冷剤との適切な組み合わせ)」、を検討する必要があります。

※②の「十分な保冷性能を持っているか」を検討する際は、想定される環境(気温・季節)や運用条件(何時間温度キープが必要か)をきちんと整理したうえで、私共のような、保冷輸送のプロに相談されることをお勧めします。(保冷箱の販売のみを生業とされている業者さんでは、保冷剤との適切な組み合わせや、運用に関するアドバイスをしてもらえないことが多いです)

業務用保冷箱の主な用途

業務用保冷箱が必要なシーンは、おおよそ3つに分かれます。

食品の輸送

アイスクリームや冷凍食品などの要冷凍食品や、冷蔵保存が必要な野菜や肉・魚などの生鮮食品の輸送時に保冷箱を使用することがあります。特に昨今は、新型コロナの影響によるインターネットスーパーの需要拡大や、飲食店の営業時間短縮による納品形態の変化(対面納品から置き納品へ)により、保冷箱の需要拡大や、求められる保冷性能に変化が生じています。

医薬品の輸送

私たちの健康を守る医薬品は、温度変化の影響を受けやすい製品のひとつです。薬品によって、厳格に保存温度が決められているものも多く、その範囲から少しでも逸脱してしまうと使用不可となるケースもあります。そのため医薬品を運ぶための保冷箱は、より確実な保冷性能を要します。コロナワクチンの輸送用途でも、保冷箱が使用されています。

その他要冷凍・冷蔵品の輸送

精密機器、化学品等 

業務用として使用される保冷箱の主な種類

業務用の保冷箱は、使用用途に合わせた様々な種類があります。今回は代表的なものを6種類ご紹介します。

ソフトボックス

ベーシックな縫製の保冷箱です。アルミフィルムで包んだ断熱材をくみ上げて箱状にしています。使用する断熱材の種類や厚みを変えることで、保冷性能を調整することができます。
また縫製品のため、様々なサイズや形状をカスタマイズすることができるのもソフトボックスの利点です。当社では、小ロットでの製造が可能なので、保冷箱の導入に迷われている方も少量の運用でお試しすることができます。
(弊社商品名:Soft-Box)

カゴ車取り付け用ソフトボックス

かご車に取り付けるタイプの大型保冷箱です。商品を個別に分けて配送する際に便利なソフトボックスとは違い、こちらの製品は、カゴ車単位で配送する際に適しています。

土台がかご車になっているので、簡単に移動させることができます。また、かご車に合わせて折りたためるタイプのものもあります。
(弊社商品名:Cargo)

シッパー

アルミフィルムのみの縫製品です。断熱材が入っておらず、アルミの遮熱(熱を反射させる)効果しかないため、保冷性能はそれほど高くありません。折りたたみコンテナと併用することが多く、ソフトボックスよりも値段が比較的安価であることが特徴です。

EPSボックス

発泡スチロール製の保冷箱です。発泡スチロール自体に断熱効果があり、箱の厚みや発泡倍率によって、保冷性能が大きく変わります。

メーカーによっては、規格品を取り扱っているところもあるので、安く購入することができます。サイズカスタマイズも可能ですが、製初期費用として高額の金型代が発生するので、小ロットのニーズでは現実的ではありません。

プラスチック製折りたたみ保冷箱

プラスチック製の外壁に断熱材を注入することで、保冷性能を持たせた折りたたみコンテナです。当社の製品である「クールワン」もこの保冷オリコンの一種です。

「オリコンとシッパーでは保冷性能が低い、ソフトボックスは洗うことができない」というこれらのデメリットをすべて解消した保冷箱になっています。未使用時は折りたたんで段積みすることができるので、保管時も無駄なスペースを取りません。
(弊社商品名:Cool One)

冷却装置付き保冷箱

保冷箱の冷媒としては保冷剤が一般的ではありますが、その保冷性能は有限で、長くは持ちません。輸送時に渋滞などのトラブルが起きてしまった場合、保冷剤の効果が切れて、中の商品の品質が損なわれてしまう可能性があります。そんな時に、より安全に確実に保冷するための冷媒として、電気の力「冷却装置」がしばしば利用されます。

当社では、オリジナルの小型冷却装置「エレキング」を開発しました。従来の冷却装置付き保冷箱は、箱本体に備え付けられているため、取り外しができず、持ち運びが非常に重労働でした。しかし、エレキングなら、箱から簡単に着脱ができるので、持ち運びが簡単です。また、箱部分をカスタマイズすることが出来るので、様々なシーンで活躍できるのも特徴の一つです。
(専門サイトはこちら)

導入プロセス

実際に保冷箱を導入する場合に踏むプロセスを四段階に分けて、説明していきます。

①設計(運用)条件を決める

まずは、商品を安全に運ぶために必要な条件を固めていきます。基本的な項目は以下の通りです。

  • 環境(運用イメージ、外気温度)
  • 許容温度(最適な保冷剤の選定)
  • 輸送時間
  • 必要有効内寸(貨物の大きさ)
  • 保冷剤を凍結させたり、蓄熱剤を調温させる設備の有無

②検証(性能)

必要条件が決まれば、その条件をクリアできる保冷箱の設計と性能検証の段階に入っていきます。保冷箱の設計と一口にいっても、箱のサイズ・形状・材質をどうするか、一緒に入れる保冷剤は何枚にするかなど、無数の選択肢がある中で、適切なもの組み合わせて検証するという工程は容易ではありません。しかし、専門のメーカーであれば、高い技術力と豊富な経験から得たノウハウを持っているため、より早く確実にお客様の条件に合った保冷箱を設計することができます。当社もそのメーカーの一つです。

※社内に恒温庫を保有しており、試作後の性能評価をスピーディに行えます。

③運用の検証

保冷箱の温度検証を無事クリアすることができれば、最終段階である実運用での検証に入っていきます。実際に運用を行い、設計条件通りに運用が可能かどうか、改めて検証する必要があります。

④納品

これらの段階を経て、初めて安心して商品を輸送することができる保冷箱が完成します。

終わりに

今回のコラムでは、業務用保冷箱の種類と導入プロセスをまとめてご紹介させていただきましたが、これでもかなり省略した内容となっています。特に導入プロセスの部分は細かいところを突き詰めると、とてもコラムでは書ききれません。様々な選択肢があることで、最適な選択を導き出すのがとても大変なことになっているのです。

新たに業務用で保冷箱の運用が必要になった際や、今の運用方法の見直しをお考えの方は、ぜひ私共にご相談ください。これまで蓄積した様々な保冷輸送のノウハウをもとに、お客様に最適な保冷輸送の方法をご提案いたします。